はえー……すっごい名作

「氷菓」で有名な米澤穂信さんの推理小説を題材にしたBB先輩劇場。
前後編合わせて90分超の長編ではありますが、
設定の面白さと映像化による巧みな演出が秀逸で飽きずに視聴し続けられました。
淫夢であることによる間口の広さと、素材そのもののユニークさが最高に噛み合ってましたね。
普通の人間は90分にも渡る長編動画いきなり投稿されても見ないだろ!!
多少のダレでも面白ければ許される特異な環境であったからこそ、原作の暗く救われない雰囲気を抱きながら多くの人を魅入らせる作品に仕上がったと思われます。

なによりBB先輩劇場とは思えないハイエンドなクオリティ、ブルっちゃうよ……

パラレルワールドに迷い込んだ主人公が、自分の世界では居なかったはずの"姉"と出会い、「間違い探し」をしていく物語。
「ボトルネック」って単語はいわゆる「律速過程」で、化学畑には反応速度論で慣れ親しんだ概念ですが、それを物語に落とし込むとこうなるのかと面白かったです。

続きからネタバレ含む感想と解釈


「間違い探しをしよう」とタイトルの「ボトルネック」が作品の主題。
作中を通して主人公は察しが悪く諦念主義な少年、かたや萃香は聡明かつ行動派な少女として描かれてる。
自分がいなければ家庭も崩壊せず、恋人も失わず、周りの人たちも全員不幸を回避できた。
街を巡るたびに抱く劣等感、無力感。自分こそが間違いであったと。
最終的には、物語の始まりであるUDKとの恋愛すら彼女の鏡面的な性格に拠るものであった
自己愛かつ自己嫌悪であったことに気づいてしまうことで生きる意味を…失う…!


結局、主人公はボトルネックだったんですよね。
そして、物語におけるボトルネックは「イチョウの樹」。これさえなければ助かる人がいた。
自分が「要らない存在」であったと自覚してしまった主人公は、そんな自分をイチョウの樹と同一視してしまう。
亡きヤミンの言葉によって「イチョウの樹」に関する言葉を手繰り寄せていくと、UDKがイチョウの樹に向かって呟いた
「死んじゃえ」
を思い起こしてしまう。
主人公にとってイチョウの樹は自分であり、イチョウに対しての憎悪が自分に向かって言われたものと錯覚してしまう。
何にも縋る相手がなかった自分の拠り所、UDKは自己を写す鏡であり、婉曲かつ直接の自殺
そこに畳み掛けて訪れたのは母親からの言伝。
「恥をかかせるだけなら、二度と帰ってこなくて構いません」
冷酷な母親からの無慈悲なメールが届き、自分は誰を救ったわけでもなくこれからも救われることはないと打ちひしがれる後味悪めなBADエンド。
……と、僕は解釈しました。

いちおう、ヤミンのイチョウの樹の解釈はその樹を愛していた老婆の思いであり、
「私には老婆の気持ちを救うことができなかったけど、あなたは守ることができた」
と、有能であった彼女なりに主人公のアイデンティティを確立させてあげたかったのだとおもう。
ただし、彼は「察しが悪い」からこそここまで来てしまったのであり、そんな彼女の優しさに気づくことはできず曲解してしまい堕ちてしまった。

ラストで「失望のまま終わらせるか、絶望しながら続けていくか」と、ここで終わらせるかどうか二者択一を迫られていますが、おそらくこの主人公は死ぬことを選べない。
この主人公は事なかれ主義で自分から行動を起こすことができず、あり得たかもしれない現在に思いを馳せたまま死にながら生きると思う。

余談ですが、
Screenshot-2017-動画
見直したら前篇のここでUDK写ってたんすねえ
最初のころは50分もある動画なのでわりと適当に流し見してましたが、そこも読み返してくとさらに面白かった。