kurosagi
マンガワンで公開されていた続きをネカフェで一気読みしてきました。
ドラマ化は山Pが主演で黒崎を演じてたそうな。見てないので原作との違いがどうとかはわかりません!

「法律は人を守ってくれない。なのになんで守る必要がある」
作品のテーマはこのセリフに集約されています。
法は弱者を救う慈愛なんかじゃなく人と人との取り決め、ルールを定めたもの。
だから詐欺師になろうってわけではなく、法律を盲目的に過信するのではなく自分で自分の身を守るために知識を働かせろよって教訓。
作中では法だけでなくとも、弁護士や企業の重役が詐欺を企てていることもあるし、身近な例だとペットショップ店員が詐欺を働いていたケースなども取り上げています。
自分は騙されるわけがない、そう思っている人たちを食いものにするのが詐欺師。
またそうやって食いものにしている立場の自分を嵌める奴がいるわけがないと慢心しているところにガブリと喰らいつくのがクロサギ。
ゆめゆめ慢心することなかれ。
ってなお話。

詐欺師には人を騙して金銭を巻き上げる白鷺、心をもてあそぶ赤鷺。それらを食いものにする黒鷺がいる。
自身の父親が詐欺師に騙されてしまい、家族を失った主人公の黒崎が詐欺師を食らい返すクロサギとして暗躍する。
基本は勧善懲悪(主人公サイドが善でなく悪でもありますが)、騙された被害者から話を聞いて対策を練り、詐欺師をうまく罠に嵌めていく物語。
詐欺師が取り扱った詐欺(振り込め詐欺なり募金詐欺なり)をさらにアレンジしてお返しして勝利するので、見ていてとっても痛快です。

クロは21歳の若造であるうえに見た目もやや幼いことから嵌められた側にもこれから嵌める側のどちらにもなめられ放題。
さらには被害者の方も依頼している立場なのに「こんなやつに頼むなんて」って態度な人もいて、そんなんだからどっちも騙されるんだぞーと思わんばかり。
なぜならクロのことをそういった偏見で見なかった相手方の詐欺師たちはどれもかれも大物揃いで一筋縄ではいかない相手ばかりだから。
ツワモノは自分が騙されずに美味くカモを狩るため、常に油断しないようにしているんでしょうね。

クロサギが喰い返す対象は桂木と呼ばれる情報屋の親父から情報を渡されます。
この桂木という男は詐欺師界隈では超有名な存在で、誰も敵に回したくない存在。
そんな人物の懐刀としてクロは活動しています。
自分が詐欺師に身を置くことになってしまった原因が桂木の息がかかった詐欺計画のせいだと知りながらも、そのあまりの強大さに裏切ることはできずいつか痛い目にあわせてやるぞと意気込むばかり。
一方で桂木のほうがクロに抱く感情は罪悪感。自分のせいで路頭に迷ってしまった、未来の希望の芽を摘んでしまったのだからせめて面倒だけはしっかりと見てやろう…といった様子。フィクサーであるため真意はわかりませんが、そうと受け取れるような描写は作中で多く見られます。
互いが互いに抱く感情の掛け違い、不器用な愛情、いびつな親子関係が見て取れてそこもこの作品で面白いところ。
ヒロインとのちぐはぐな恋愛描写に並んで好きなところです。

法の無能さをこれでもかと知らしめてくれるのがヒロインの吉川氷柱。
それを象徴しているのが13巻のマネーロンダリング詐欺かな。
いくつもの口座を経由することでその金の出所を洗い流しきれいなものにする手法。
もちろん法律でしっかり規制されているけれど、詐欺師の側はそんなの意に介さずさらに上回る手法で法の網をくぐりぬけていく。
ほかにも生真面目であることから、友人や知り合いの被害に対して親身になってアクションを起こすけれども、残念なことに普通の漫画ではなく詐欺師を取り扱った漫画であるためにアクション自体は悪くないものの結果的に被害に巻き込まれ彼女の持ち前の性善説がぐいぐい揺らいでいくことに。
彼女自身は真剣にクロのことを思って行動しているけれど、それがどれもこれもやや裏目に出ちゃってる。

警察の無能さをむざむざと白日の目に晒してくれるのはライバルその5の神志名将。
びっくりするほど余計なことしかしない…
ゆるぎない正義心は問題ないものの、噛み付くタイミングがどれもクロにとってはバッドタイミング。
クロサギの最終話ではようやく首ねっこをおさえることができた宿敵:御木本をむざむざ逃がしてしまうことに。
国家権力じゃどうにもならない相手はいるってことを教えてくれる。
そこで(自分のやっていることはなんなんだ)と自省してくれればいいのに、それでもなお詐欺師は全員悪だと固執して結果的に損を掴んでいる惜しい男。


読んだばかりで印象に強く残っているということもありますが、作中で出てきた詐欺のなかで一番感心したのは16巻の「裏口入学詐欺」
その名のとおりで、馬鹿親が馬鹿息子を医学部へ入学させるために理事などに袖の下を渡す。そんなところにつけこんだブローカーの詐欺。
ほかの詐欺と違ってこの詐欺に感心したのは
「本人が実力で受かってしまえば詐欺がばれないこと」
読んでて思わず納得してしまった。た、たしかにー!!!!
顛末はこの詐欺師に対してクロは裏口入学させたい側の大学サイドでこいつを騙し、受験会場という空想の場を用意してしっかりお金をふんだくる。裏口入学なんてできずに終わった被害者が警察に訴え逮捕しておしまい。
裏口入学なんてしたことがばれたら受験者側のほうも少なからずダメージ受けるだろと思うんですが、そんなことは気にせず訴えるんだーとそっちに疑問をやや抱いた。
もちろん騙したほうも悪いけど、同じく悪いことをしたのは依頼者側でもあるのに、「自分たちは被害者だ! お前のようなチンピラがこっちの事情に口を挟むな!」と終始高圧的なのがいやだったなあ。

並んで面白かったのは12巻。
映画の原作ってことであるからか、普段じゃありえない桂木のやさしい一面が見られた回。
もちろん手放しに信じちゃいけないけど、これまでに褒められたことなんてなかったから困惑してどう受け取ったらいいのかわからないクロ。
認められるうれしさと、その相手が桂木であることに対しての葛藤に揺れる黒崎の姿は新鮮で面白かったです。単なるビジネス相手、ましてや自分がこんなことをしなければならなくなった元凶であるのに、自分はそんな相手にこれまで面倒を見てもらっていたうえにその仕事を認められたらどう受け取ればいいのか悩むのは当然のこと。

新クロサギのほうでこっちの関係がより深く描かれてるかなーと希望を抱いておしまい。